2014年5月19日月曜日

悪戦墓闘

小さな仏壇にしたので、その下に骨壺を配置してある。それらを中心に、上さんが寝起きしていた和室は、遺影やら好きだった写真やら遺品やらを飾って、追悼の部屋になっている。骨壺はそのままにしていてもスペース的に邪魔にならず、心理的に支障があるわけでもない。しかし…、と考えた。俺が死んで骨壺が二つになれば、子供たちがその始末に困るだろう。親も親類も頼らず二人で勝手に生きてきたので、上さんも俺も入るべき墓がない。この際、俺の墓を建てておき、そこに上さんを先に入れておこう。

子供たちは今のところ遠くに移住する気配がないので、墓を建てるなら近くが良かろう。寺の檀家になると抜けられない事は友人Fの話で察しがつく。煩わされることのない霊園が良い。チラシやネットで調べた4軒を5月4日、5日と半日ずつ見て回る。初めて知ることが少なからずあったので記録に残しておこう。…もっとも二つ目の墓を買うために後日参照することはまずないのだが。

墓地は買うものだと思っていたが、言わば借りて使うものだった。だから「永代使用料」と言う。所有者はあくまで霊園であって、それを使用する権利に金を払う。このあたりだと1㎡で40-50万が相場だ。では、その使用権を販売するのは霊園だろうと思いきや石材店である。墓石を売る石材店が建てる土地を斡旋する構図だ。これは未確認だが、石材店は墓石を売る販売権を得るために霊園所有者にを支払ってもいるようだ。結局、霊園の所有者は事務所を設置して管理しているだけに過ぎず、墓石を売る側と買う側の両方から金を得る。良い商売である。

一つの霊園には、墓石の販売権を得た複数の石材店が詰めている。墓石を売る上で互いに競合するので、あの手この手で「ぜひ当社に」と群がってくるのだろうと思いきや、さにあらず。受付には輪番制で日替わりで一社だけが詰めており、指定の石材店があるかと聞く。チラシ等で指定店があればあっさり紹介して、奪い取ろうとはしない。チラシは持っていたが、あえて指定店はないと言うと、「フリー」のお客として、その日詰めていた石材店が担当するという決まりらしい。競合するはずの石材店同士が、言わば紳士協定を結んで過当競争による安値販売や過剰勧誘を回避しているらしい。毎日他社との競合にさらされている身には、談合的とも言えるこのシステムは驚きというか羨ましいというか、妙な感覚を抱いた。

墓地にも標準やらゆとりやら芝生やら様々な種類がある上に、面積も0.5-4㎡間に刻みが多い。標準は墓石の左右に隙間が1cmあるかないかなのに対して、ゆとりは10cmぐらいのスペースがある。ゆとりにも背面が墓石どおし隣接しているものと垣根で仕切っているものとがある。芝生は文字通り基礎コンクリートの周囲を芝生敷きにしたものだ。上さんなら何を好み値段との折り合いをどうつけるだろうと想像しながら、迷うところは自分の墓地だと思えば判断は早い。ゆとり墓地で広さは1.0-1.2㎡と決める。

墓石はさらに厄介だ。まず石材の種類にきりがない。産地はかつて中国、いまはインドや南アフリカが多いという。国産は希少価値で高価だ。ついで装飾にも額出、亀腹、深堀り・二度彫りなどなど正に千差万別。当然、種類や装飾によって値段が変わる。しかも石材で数十万単位、装飾一つにつき数万単位でポンポン上がる。墓を購入する人は石材には大抵素人なので、こうなると相見積もりで競合させないことには、ほとんど言い値で買わされることになる。条件として、石材は南ア産インパラブルーとし、装飾はオプション一式とした。固く黒っぽい石の中に青い星が輝くインパラブルーは高価だが上さん好みだし、見栄坊だったので装飾も凝った条件でまずは見積もることとした。

同じ霊園内で石材店が競合しないなら、霊園をまたいで競合させればよい。4か所廻った中からZ霊園とY墓苑に絞る。いずれも明るい雰囲気で最寄駅からの距離も同等。Z霊園は自宅からの近さと永代使用料の安さが強み、Y墓苑は昨年オープンの新しさと綺麗さが強みだ。弱みは、Zが高圧線と隣接の産廃施設、Yが騒音といったところだ。霊園そのものとしては、Y墓苑のほうが気に入った。あとは価格次第。永代使用料や年間管理料はYのほうが墓地面積に対して割高だか、その差は数万・数千円の単位で大したことはない。残るは墓石の価格だ。それぞれの霊園で「フリー客」として案内した石材店担当に、同一条件で見積もらせて価格競合させながら値引き交渉すればよい。

Z霊園担当は個人経営の、Y墓苑担当は大手の、それぞれ石材会社だ。同条件の見積である。Zは100万、Yは180万を提示した。いずれも通常200万以上する高級石材と凝った装飾なので、これが限界という。80万もの差は、複数の要因から生じているらしい。Zは石材の直接仕入れでコストを下げた上に、職人主体の会社なのでどんな装飾でも一括引き受けでコストを抑えている。影彫りと称す独自技術の追加も含めるが、これ以上の値引きは勘弁してくれという。対してYは問屋流通コストや社内人件費が嵩む上に、各装飾毎に規定料金を上乗せすることで儲ける大手ならではの仕組みだ。「50万以上の開きがあるので他社にするぞ」と更なる値引きを迫ったが、条件を緩和しない限り無理という。Z担当は父親と兄経営の石材店で修業した職人で、Y担当は長年実績を積んだ女性営業課長だ。前者は営業下手だが、石に詳しい上に値引き額を即決できる。後者は営業上手だが、石はマニュアル知識でしかなく値引きの判断も限定的だ。

Z担当に内定して、契約書を書かせたのが6日。連休最終日のこの日は釣行したかったのだが、それ以上に決めてしまいたくなったので3日連続で霊園に足を向けた。決定打は価格差だが、俺も技術者の端くれ、口下手でも石材や彫刻技術に明るく必至なZ担当とのほうが話しが合ったとも言える。受付が非番な日は霊園の墓地現場で組立工事している様子も確認済だ。ばっさり値切りさせた揚句、石材や彫刻・装飾にさんざん注文をつけて契約書を作成させたが、この日サインは保留した。個人経営なので与信に不安があり、それを物語るように契約書も手書きでいかにも頼りない。慌てて後悔しないか自らクーリングオフする意味もある。前金支払い後に詐欺に騙されてはたまらない。「縁起でもない事を言うが、墓石製作中にあなたが死んだら、誰がこの仕事を完了させてくれるのか?」と問う。修業していた父親・兄貴の石材店で現在はアドバイザーの肩書も持っており、その名刺を出して「ここが代わりにやってくれるから心配なく」との答え。いつ再訪するとも告げずにこの日は去る。

ざっと調べたところその石材店は歴史があり、大手有名霊園での実績も多く、大丈夫そうだ。翌週末に再訪して、「契約しよう」と告げる。素朴な笑み満面さがいかにも職人気質だ。信用してはいるのだが、「銀行引出に一日限度額があるのを知らなんだ」として50万だけ前払いする。ほとんどが永代使用料や管理料など霊園に支払われて、石材店には数万ほどしか入らない額である。「全然問題ありません。仕事にかかります。墓石彫刻図面ができたら送るので何度でも修正してください。掘り始めたら変更できませんから」と、仕事できることが嬉しそうだ。その日5月10日(土)に契約。奇しくも上さんの4か月目の月命日だった。

2014年5月18日日曜日

季節のムギイカ

2014年5月17日(土)釣行 中潮
平安丸 8号船 左舷ミヨシ1番(左7、右7)
6:20出港 14:15納竿 15:00帰港
真鶴沖 水深40-50m 波0.5m
晴れ 北東後南西の風0-5m

ムギイカ 84杯 胴長10-15cm

先週は2年ぶりに美味いマルイカをそれなりに楽しんだのだが、イカ釣りの楽しさはやはり数釣りだ。茅ヶ崎から真鶴にかけてムギイカが釣れ盛っているようなので、小田原早川港へ。ムギイカは錘80-100号電動が一般的だが、水深も浅いので先週のマルイカと同じ40号手巻きのライトタックルで挑む。平安丸には電動、ライトの他に、当地で盛んな手釣りの人も多い。

直結・直ブラ5本スッテ仕掛けで開始。小さなムギイカにちょうど良いのか、5cmに満たないスッテに乗ってくる。一投目からダブル。以降ポツポツ掛けて楽しい。入れノリというわけではなく、底だったり中層だったり、誘いも早めだったり遅めだったり、色々試していると乗ってくる。何もしないと乗ってこない。マルイカと異なり、明確なアタリと小さい割には強い引きとが楽しい。

44杯贈呈後でもこのボリューム…
84杯持ち帰ったらゾッとしていたろう
乗りが遠のくと、周囲を観察。乗っている人の仕掛けに替える。11cm直結、14cm直結、11cmブランコと入れ替える度に乗るので嬉しくなる。単発が多いが、時々ダブル、トリプル、最高で5点掛けも。調子に乗って浮スッテのブランコ仕掛けも試してみたが、これは今一だった。群れが大きくて多点掛け連発という派手さはなかったが、一日を通して飽きることなくポツポツ乗りつづけ、結局自己記録更新の84杯。船中20-99。手釣りの人が130杯釣っていたが、協定でもあるのか船宿の発表はいつも99が上限だ。手釣りは慣れると感知できるアタリも多く、手返しも早くなるのだろう、数が伸びる。

スルメイカの子だが麦の穂がなる頃によく釣れるのでムギイカと呼ばれるようになったという。食べきれないので、同僚Yさんに30匹、ご近所に14匹もらってもらう。快晴・凪に、Tシャツ・海パンの夏仕様で釣行。移動時の風はまだ寒くて上着を羽織ったが、実釣中には良く焼けた。大雪は上さんの涙かと思った1月からもう4か月。梅から桜、桜から皐月へ。その皐月も散り始めて緑がこくなったと、季節の移ろいに気をとめるようになった。もう夏だ。

シマノバイオインパクトマルイカ165M + シマノ幻風 PE1号
錘40号 スッテ直結・直ブラ5本
錘50号 11cmプラヅノ直結8本、14cm同、11cmプラヅノブランコ7本、スッテブランコ5本

2014年5月11日日曜日

悪イカ苦闘

出船準備の喜平治丸の向こう
房総半島越しに日が昇る
2014年5月11日(日)釣行 中潮
喜平治丸 8号船 左舷トモ5番(左11、右11)
5:30出港 12:45納竿 13:05帰港
城ケ島南沖 水深50-30m
晴れ 北東の風3-0m

マルイカ 8匹 胴長10-15cm
ムギイカ 9匹 胴長10-17cm

週半ばに城ケ島沖でマルイカが釣れ出した。イカが湧くと人も湧く。快晴凪予報に急ぎ間口港へ。2艘とも空き席が2-3か所というところへ滑り込む。満船で乗れない人もいた。城ケ島沖を探索しながら西進。イワシが回遊して鳥山が大きい。地元の他に佐島や長井の船も集結している。

このサイズだと
おちょくられる
朝の二投でムギの一荷とマルを掛けてまずまずの滑り出し。ところが徐々にサワリを感じるが掛け損いが増えていく。久しぶりの感覚についつい夢中になる。掛けても巻き上げ中にバレて天を仰ぐ展開に。ムギもマルも小さいのでタイミングよく掛けないと取り込めない。

それでもなんとか序盤にムギをポツリポツリ追釣。中盤以降探索クルーズが長く多くなったが、飽きない程度にマルイカが釣れる。終盤はノリも悪くなったので、ブランコでポツリポツリ。都合17匹は型が小さいこともあって少々物足りない釣果だが、二年ぶりにマルイカに遊ばれて楽しい釣行に。二艘で船中9-75。腕や技で違いの出る釣りだ。

バイオインパクトマルイカ165M+幻風 PE1号
錘40号+直結・直ブラ5本針、錘50号+ブランコ5本針

2014年5月10日土曜日

悪草苦闘

今年のGWは曜日の並びから前半と後半に割れた。後半の5月2日に休みをとって5連休にしたが、すでに記したように釣行は3日の仕立てのみだった。他の休日は荒れ放題になっていた家周りの清掃、クローゼット遺品の整理、そして墓探しに終始した。

家周りの清掃は、主に雑草むしりとプランターの廃棄だ。実は4月29日に始めたのだが、ポーチの雑草をとり、植込みの落ち葉を払い出し、隣家から侵入して壁に到達した蔦をむしった時点でギブアップ。久しぶりにスクワット運動をしたようなもので、翌二日ほどはモモが痛んだ。2日になって庭の草取りを済ませたのだが、40Lのごみ袋で都合二杯もの雑草・落ち葉に。雨を待った6日に雑草薬を撒いて一段落。

往生したのはプランター。大中小、丸形や長方形の様々なものがごろごろ20近くもあった。いったいいつの間にこれほどまでにため込んだのか。駅前まで散歩しては気に入ったものを買い足していたのだろう。しかし草花が植えられているものは皆無で、枯れた根と土が入っているだけか、打ち捨てられて雨水が入っているかのいずれかだ。元気な頃にきれいな草花を育ててはニコニコと喜んでいたのを偲ぶ。この10年ほどは活けたいのが思うように体を動かせずだったのだろう。愛犬クロベエが掘った穴をプランターの土で埋める。蚊取り線香置きに使えそうな3枚の受け皿のみ残して、全て廃棄。芝生もすっかり傷んでしまったが、3歳児が大きくなるまでは貼り直しても無駄だろう。かつて一時使った人工芝を敷き直して土汚れを防ぐ。すっきりした庭、通路、ポーチを展開から眺めて喜んでいよう。

2014年5月3日土曜日

想定通りの展開

2014年5月3日(土)釣行 中潮
育丸 → 丸重丸 右舷胴間(右3、左3)
5:30出港 12:30納竿 12:45帰港
城ケ島西沖水深40-50m → 剣埼沖水深20-30m
曇り後晴れ 南西の風0-5m 波0-0.5m

マルイカ 0
カサゴ 15匹 17-25cm リリース&贈呈
ベラやトラギス リリース

月例仕立て。間口や江奈港のほとんどの船宿がマダイ狙う中、敢えてマルイカを狙うという。毎年GWにはマダイを狙うが、船も釣り客も多くてあまり釣れないし、コマセマダイは退屈だというのがその理由。マルイカは今シーズン深場で釣れた後浅場ではムラが大きく、今はほとんど釣れていない。しかもイカ釣りを看板にする船宿ではないので、チャレンジャーというより無謀だ。皆承知しているので、保険にカサゴとのリレーにするところが、この仕立てメンバーの楽しいところだ。

城ケ島南沖からマルイカの群れを探しながら西進すのだが、案の定見当たらない。北進して亀城根を目指すと、霧か霞か靄か、ともかく視程が20m有るか無しかに。360度白い空気に囲まれて陸地は全く見えず、視界にはべた波の水面だけ。まるで早朝に山奥の池に迷い込んだような幻想的な雰囲気に。こうなるとイカを探すどころか他船とぶつからないようにするのに精いっぱい。遊覧船どころか、幽霊船の様相に。結局4投しただけでイカの顔みず、9時ごろ剣埼沖に引き返す。不思議なことに、城ケ島の西では靄で曇り肌寒いが、東では晴れ渡って心地よい。

カサゴを狙うのは初めてだが、アカムツと同様に底をトレースすれば、ポツポツ釣れる。水深が浅いのでアタリもわかりやすく、頻繁なので飽きることがない。ところがその半分も掛けられない。即合わせしてみたり、一呼吸おいてみたり、じっくり喰いこませてみたり、とあれこれ試して楽しむ。が、これが正解というのが結局わからず。都合15匹釣り上げたのだが、型が小さいのでほとんどリリースし、まぁまぁサイズ3匹は持ち帰ってもしょうがないのでメンバーのMさんに贈呈。船中では30匹クラスも釣れていたので、タナなり誘いなりなにがしかコツがあるのだろう。針掛りと併せ、たかがカサゴでも奥は深いということか。

マルイカは沈黙・カサゴを楽しむ、という想定通りの結果に、ラーメンをすすりながら皆笑う。結局クーラーボックスを汚すことなく帰宅。出港帰港が早くなって気分的に楽だ。洗濯・風呂・釣具清掃を済ませて、まだこのブログも書ける。過去ログを眺めると、カサゴを持ち帰ると「嫌いやのになんで持って帰ってきたん?」と言われ、持ち帰らなければないで「何やってきたん?」と言われた日々が懐かしい。

シマノ バイオインパクトマルイカ165 + 幻風 PE1号
マルイカ: 錘40号 直結+直ブラ5本針
カサゴ: 錘25号 3号95cm 2本針